ハイブリッドSRモータージェネレーター(HBSRMG)は、蓄電池等からの直流をON・OFFのスイッチングによる矩形波駆動が可能であるため、通常のモーターのようにインバーターによって直流を正弦波にして駆動するわけではない。
正弦波によるアナログ制御ではなく、矩形波によるデジタル制御のため、エネルギー損失、容積、重量を削減できるメリットがある。
矩形波駆動であるSR(スイッチド・リラクタンス)モーターは高速運転には適するが低速運転時のトルク不足が課題であったが、HBSRMGではこれを解消できた。
正弦波駆動と矩形波駆動では、矩形波駆動の方が、パワー半導体の性能向上により、モーターに対して時間あたりの電流値を大きくすることができるため、トルクを向上(電流値の二乗に比例)させることができる。
また、永久磁石は回転磁界を形成するわけではなく、永久磁石の磁力線は電磁石の磁力線と合成され、リラクタンストルクとなる。
起磁力は、通常の永久磁石を使わないSRモーターでは、アンペアターン(電流値とコイルの巻き数の積)によるわけだが、HBSRMGはコイルの磁力線と永久磁石の磁力線の相乗効果により、ターン数を大幅に減らすことができ、その分コイルの抵抗値も大幅に小さくなるので、電流を大量に流すことができる。
よって大トルクを出すことができる。
これは、通常のモーターとは永久磁石の使い方(磁場の形成)が違うためと思われる。
つまり、永久磁石による磁路と電磁石による磁路が、より近い磁路、あるいはより磁束密度の薄い磁路を自動的に光速で選択して、切り替わっていくためと思われる。
これにより永久磁石(ネオジウム系)の使用量もIPM等と比較して1/4以下に減らすことができる。
通常のモーターシステムは、モーター、インバーター、ギア等で構成され、電気信号を制御するインバーターを通してバッテリー等からの電気エネルギーをモーターへ伝達し、モーターから発生した動力を、ギアを通して運動エネルギーとしてタイヤ等に伝えることでモビリティが駆動する。この一連の過程において各機器で損失が発生する。
モビリティに求められるパワーや積載性とシステム効率を両立させるには、①出力密度(kW/kg)の向上、②小型化・軽量化、③損失低減、④効率的な熱マネージメント等が必要となる。
これらを実現するために、HBSRMGにおいては、ギアも不要であり、連続定格運転領域が広いので冷却機構は簡略化でき、ティースのアゴと永久磁石の相乗効果(特許登録済み)により、体格の割にはコイルスペースを広くとれ、銅損が低減できる。
ギア等が不要でモーターシステム効率と出力密度を同時に向上させることができるので、軽自動車、商用車、空飛ぶクルマ等の電動化を促進させることができる。
近年では、モーターシステムの高出力化の実現のために高速回転化と多段ギア活用の方向で開発が進んでいるが、システム効率の向上には課題も生じており、システム効率向上と出力密度を同時に達成する抜本的な技術開発が必要とされている。
モーターシステム効率と出力密度
限られた蓄電池容量に対する航続距離を拡大していくため、平均のモーターシステム効率として85%以上の実現を目指す。
通常はモーター単体で最高効率95%といえども、インバーター、低速運転帯域、減速ギヤ、冷却機構等のロスにより、平均のモーターシステム効率は60~70%となってしまう。
同時に、より幅広いモビリティ領域の電動化を可能とするため、モーターシステムの小型軽量高出力化の目標の目安として、モーター単体で8.0KW/kg、モーターシステムとして3.0 KW/kgの出力密度を目指す。
既存の一般的な電動車に搭載されている現行モーター単体で4.0KW/kg前後、モーターシステムとして1.0~1.5KW/kg程度と言われており、その大幅な改善(2倍以上)を目指す。
モーターシステム効率値につては、モビリティ用途では、ストップ&ゴーが多く、また坂道発進や高速道路走行も想定され、モーターの回転数、トルクおよび出力が大きく変化する中で、電気の消費効率を向上させるためには、幅広い帯域全体にわたってのシステム効率の向上させることが重要であるため、最高効率値ではなく、WLTCモード(世界統一試験サイクル)等の一定のモード走行時のシステム効率の全体平均値として評価する。
価格目標またはそれに類する目標については、商用化段階に想定される設備投資・資源価格等をベースに合理的な試算を行い、目標達成を評価するものとする。
モーターシステムにおける近年の研究開発のトレンドとして、モーターをより高速化して多段ギアで減速することで低回転領域での高トルク化を実現する方向で開発が進んでいる。しかし、ギアの多段化によるサイズ・重量の増大によるモーターシステム全体としての出力密度向上は現在の技術水準では飽和しつつあり、またモーターシステム効率にも課題がある。
本プロジェクトでは、モーターシステム効率と出力密度を同時に大幅に向上させることを目標として掲げており、従来の取組の延長性にはない抜本的な技術革新となる。
2024年5月
(株)ゲネシス・ラボ
代表取締役 荻野三四郎
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