2012年9月26日水曜日

ものづくりの現場から④

日本には「出る杭は打たれる。」という諺がありますが、今こそ「出る杭を引き出す」勇気を持たなければいけません。

自然エネルギー(太陽光、風、川の流れ、地熱等)と一口にいっても、天が無償で与えてくれるものではありません。
これらを有効活用するためには、根本的な技術革新が必要です。
特に電力を供給する発電機は進歩する余地をたくさん残しています。

発送電分離という議論が進んでいますが、これは自然エネルギー普及にとっては欠かせないものだと思います。電力会社の送電線網に規制されず自然エネルギーを地産地消できれば、大幅なロス(電力のみならずコストも)の削減になります。

今回の震災で、東北が自然エネルギーの普及のため、規制を緩和する特区構想があります。
これはとりもなおさず、メガソーラー、風力、小水力、地熱排熱等、現地で発電したエネルギーを要所要所に充電スポットを作って地元の人たちが規制にとらわれず電気を使えることになります。

電信柱というものはどこにでもあるわけですが、これはインフラそのもので、がんじがらめに規制されています。ポスター1枚はるにも許可が必要です。
この電信柱を自由に使えるようになれば、いろいろなことができます。小型のソーラーパネル、風車発電機をつけてもよいでしょうし、放射能による汚染度を測定する機器の設置もできるようになります。
この特区構想は自然エネルギーを普及させるための一大実験場となることでしょう。

モーター、発電機がローテクの最たるものという話をしましたが、このローテクを軽視してはいけません。
電力を供給する発電機そのものの性能を向上させることは喫緊の課題です。
また、ハイテク技術もこのローテクによって支えられています。
半導体を作るためのXYプロッターは高精度のモーターによって製造可能となっています。

身近な例ですとパソコンはみなさんもう必需品ですよね。実はハイテクの粋であるPCもこのローテクのモーターに支えられています。
PCはCPUの容量がそれこそ幾何級数的に伸びているわけで、たいへん熱を持ちます。この熱を冷ますのが軸流ファンモーターというものです。ちょうど換気扇をもっと平べったくして小さくしたものです。

ノートブックPCは薄くする競争になっています。ここで問題になっているのが軸流ファンモーターなのです。CPUの性能はどんどん上がって熱も余計帯びるようになっているのですが、それを冷やすモーターが追い付かなくなってしまっているのです。


PCそのものを薄くするにあたってファンモーターの嵩がネックとなっています。ファンモーターを薄くすれば出力は減ります。しかしPCを薄くするためにはファンモーターを薄くせざるを得ません。ここがジレンマとなっています。

PC用の軸流ファンモーターは市場規模としては、5000億円(こんな小さなモーター、一つとってもマーケットは巨大です。)を超えていると思います。
一昔前までは日本のメーカー(日本電産、ミネベア等)でほぼ市場を独占していました。今は台湾、韓国のメーカーにそのシェアをドンドン奪われていて、コスト競争の波にさらされています。

精密機器や薬剤、食品を作る工場のクリーンルームはロボット、ベルトコンベアー、電動フォークリフト等皆高性能なモーターがなければ成立しません。家庭の冷蔵庫、洗濯機、エアコン、掃除機みなしかりです。

省エネ機器として大事なものにコンプレッサーというものがあります、家電ではエアコン、冷蔵庫のなかに組み込まれていますので、一般の人には目に触れることがなく馴染みが薄いかもしれません。

このコンプレッサーもモーターで駆動します。これは空気等を圧縮するために必要なものでして家電以外にもいろいろなところで使われています。

大型の工作機械やクレーン、ブルドーザー、フォークリフト等の重機は大きな力が必要なので油圧、空圧のシリンダーを使っています。これを駆動させるためにもコンプレッサーは欠かせません。

油圧、空圧を使った機器はコンプレッサーを回しっぱなしにするので、思いのほか電気を消費します。
電動のシリンダーであれば、コンプレッサーなしで、使う時だけ電気を入れればよいので、俄然省エネになるのですが、力が足らず、やむを得ず油圧、空圧のシリンダーを使わざるを得ないのが現状です。

油圧、空圧に負けない電動シリンダーが現実化するのもそう遠い将来ではありません。
これができるとガンダムのようなロボットやSFのなかのアンドロイドも決して夢ではなくなってきます。

モーターメーカーは最高効率を1%あげることに一生懸命になっています。
最高効率が高ければ高いほど性能が良いという固定観念にとらわれています。

電気自動車のところでも述べましたが、実際に電気を食うのはトルクが大きく必要なときです。
最高効率85%のものを86%にできたところで大勢に影響はありません。低速時、大トルクが必要なときに30%の効率を60%にあげることが省エネにつながるのです。

省エネが叫ばれて久しいわけですが、自然エネルギーを普及させるためにも、このローテクであるモーター、発電機を見直さなければいけません。

製造業の競争社会のなかで成熟などという言葉は通用しません。
既成概念、固定観念にとらわれていたら、技術革新などできるはずがありません。

日本は成熟社会に入ったのだからそれなりの暮らしをしましょうなどといっているひとほど、思考停止状態と言わざるを得ません。
鍋にかけられたカエルが茹で上がるまで気が付かないようなものです。

いみじくも日本という国が技術立国を標榜するのであれば、発想の転換を図れる人材がリーダーシップをとれる環境を早急に整えなければいけません。
よく「平和ボケ」といいますが、現状の安住に身をゆだねているだけでは凋落の一途をたどるだけです。

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